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「大人の発達障がい」②

『久留米大学医学部・神経精神医学講座』 の内容を4回に分けて掲載します。
講演者:准教授 内野俊郎

《発達障がいはもう古い⁈》 「精神発達症群」は発達凸凹

今、お医者さんの世界では「発達障がい」は、「神経発達症群」に名前が変更されています。精神科の先生でもまだ知らない先生はいらっしゃるくらいです。これまでの名称は、間違っていたから変わったわけではありません。大きく発達障がいと分類される中に、いわゆる「自閉症」の方もおられますし、「アスペルガー症候群」、「ADHD(注意欠陥多動性障害」が含まれます。今の分類には知的障がいも「LD(学習障害)」も入っています。難しいですよね。なんか、似たような名前だし…。この中でも「アスペルガー症候群」を中心とした自閉症スペクトラム、ADHDやLDが特に話題なることが多いですので、今日はそこを中心にお話ししていこうと思います。

現実には、それぞれの障がいの特徴が1人の方にいくつも一緒に現れることが多いのです。クリアには分かれない。ADHDの項目なんかを見てると「え?私?」なんていうのが並んでいます。今までそんな風に思ったことのない人でも。精神科領域の病気や障がいは、そういうところがあるようです。実は「障がい」というので、まずそれが問題なのかもしれません。「disorder」という外国の診断に使われている言葉を日本語に訳すると「障がい」となっちゃうので仕方ないのですが、杉山先生という発達障がいの専門医の方は、障がいという言葉の代わりに凸凹という表現を使われます。

確かに「障がい」という言葉が実感されるくらいに本人がすごく困っているケースもある一方で、「障がい」という言葉が非常にショッキングな体験になる方もおられるのです。同じ名前でも、その程度には個々で大きな差があるんです。そういった点への配慮もあって「凸凹なんだ」と言う表現のようです。確かにそうだなと私も思っています。例として、私達が物事を捉え、判断して対応していく時の脳の働きのひとつを「認知機能」と言います。近くに起きた事をキャッチして、その意味を考えて、その事をしばらく覚えとかないといけない・・・今日、私は2時に来ることになっていたのですが、まずその時間を覚えておかなきゃいけないですね。そうして「ここではこういう事が起きるだろうな」という推論します。あるいは、ここでみなさんとやり取りをしながら、皆さんの表情を見て「あ、僕の話は全然伝わっていないな」とかって推論します。それを全然推論しないで、僕の考えていることだけを喋り続けたら、皆さんすぐに帰りたくなるだろうと思います。ひたすら、医者にしかわからない言葉で延々と喋り続けたら、皆さん嫌だと思います。「少しは伝わっているな」とか「今の話は、伝わらなかったな」とか推論する能力がいります。それに合わせて私は、言葉を変えたり説明の仕方を変えたりといった、問題解決を図る技量が必要になるわけです。そういった事のバランスが完全に均一という人なんかいないんです。

発達障がいと言われる人は、この凸凹がちょっと大きい。そんな理解をしてもらえばいいのかなと思います。発達障がいと言われる人が苦しいのは、この凸凹具合なんです。今日は、発達障がいと何度も出てきますが、基本この凸凹の課題が大きい人達という風に考えてくだされば良いと思います。



内野俊郎(うちの としろう) プロフィール

1992年 佐賀医科大学(現・佐賀大学医学部)出身
学位:博士(医学)
日本精神神経学会 専門医、指導医、精神保健指定医

〈役員関連〉
日本メディア学会 評議員・理事
日本精神障がい者リハビリテーション学会 EBP
日本心理教育・家族教室ネットワーク運営委員